SBM研究会に参加した

すでに多数レポが挙がっていますが、2008/7/12(土)に東工大大岡山キャンパスで開催された「第1回SBM (ソーシャルブックマーク) 研究会」に参加してきました。

発表内容のまとめは今さらという感じなので、感想 (というか、発表を聞いて考えたこと) だけ書きます。

全般

  • ソーシャルブックマークに関係した研究・ビジネス・サービスに関する様々な話が聞けたのは非常に有益だった。
    • できれば今後、自分も何かネタを作って発表する側に回りたい。
  • ソーシャルブックマークの利用目的: 以前勤務先の勉強会で、ソーシャルブックマークの利用目的について議論があり、「ローカルのブックマークの延長 (自分用のツール)」、「Web上で見つけた有用な情報の共有」、「(コメントを用いた) コミュニケーション手段」などの利用目的が挙げられた。今回の発表でも利用目的の違いについての言及が若干あったが、それを正面から扱った議論があっても良かった。
  • 参加者の多様性について: 大学、企業 (大企業、ベンチャー) から多様な参加が集まっていた。が、女性率については (ry
    • 真面目な話、今回の研究会は開発者サイドに偏っている感があるので、利用者サイドからの活用方法や要望に関する発表があると良いと思った。

ソーシャルブックマークマーケティング (横田真俊さん/スラッシュドット編集者)

  • SBMの認知度・利用率の低さは、私の実感に一致している。私の周りでは、知っていても使わない/使う気がしないという人が多い。
  • 特定の領域に特化したSBMという方向性は、集積される情報の質を高める方向に向かうと考えられるので、1つの有望な方向であるのは確かだと思う。
    • とはいえ、SBMの元々の意義 (の1つ) は多様な情報を整理することだったはずで、「閉鎖空間」アプローチはそれを部分的に放棄しているようにも感じられる。
  • 個人的には、カジュアルにWebを使うような一般層が日常的に使うようなSBMはありうるかに興味がある。
    • 講演中で、mixiではmixiニュースがSBMに相当する役割を持っているという話があったが、それをもっと一般化した形にできないだろうか?
    • そもそもカジュアルユーザは、Webページを後で参照するためにクリッピングしたいとは思わないのかもしれない。

SBMデータを用いたwebコンテンツ推薦 (宮田高道さん、佐々木祥さん/東工大集積システム専攻)

  • SBMを用いたコンテンツ推薦の研究は良く聞くが、それ以外の方向性にはどんなものがあるだろうか?
    • 発表中では、検索容易化、時系列データ活用、全文検索のランキングへの反映が上げられていた。
  • タグをアイテム (コンテンツ) のグルーピングだけに用いるというアプローチには納得間がある。
    • 同一ユーザによるタグ付け基準のゆらぎについてはどう考えるか?
  • Bパート (Anti-FolksonomyアプローチにもとづくSBMデータからのWeb推薦) は、残念ながら撃沈。
    • 確率・統計の理論がベースのようなので、この辺をもう1回勉強してみようかな。

Webの世界に「気付き」を集積するコモンズ・マーカー (星暁雄/コモンズ・メディア代表)

  • コモンズマーカーの存在は知っていたが、まだ使っていない
  • コモンズマーカーの3つの側面 (アノテーションミニブログ、ポインタつきSBM) について
    • アノテーション (あるいは赤入れ?) については、自分で使いたくなる状況を思いつかなかった。
    • ミニブログ的なコミュニケーション手段としての活用はありえそう。
    • ポインタつきSBMとしての側面では、現在のSBMでも、コメント欄に本文の引用を書くことはよくあるので、それをシステム化したものと理解した。
  • 現在は対象のWebページの内容が変わらない場合に限定されているとのことで、将来的にどの程度緩和されるものかに興味がある。
    • マーカーを入れる位置をどう指定しているかは聞き逃したが、「〜文字目」のような指定でなく、文字列マッチングに基づく指定の方が文章の更新には強そう。

お前のモノ(ブックマーク)は俺のモノ、俺のモノ(ブックマーク)も俺のモノ (井口誠さん/フランステレコム)

  • SBM普及への障壁としてブックマーク共有への心理的な抵抗感があることは考えていなかったが、確かにありそう。
  • 自分にとってのSBM利用目的の1つは、自分が使っている複数PC間でのブックマーク共有なので、下手にP2P化してしまうと、その目的が損なわれる懸念がある。
    • 特定のpeer間でブックマークを共有できるようにすれば良い?
  • 参加者の手元のPCがpeerになるような形態を普及させるのは無理があると思うが、サーバ上で擬似的に匿名P2Pネットワークを構築するというアプローチもありそう。
  • 自分自身は積極的にこの種のサービスを使おうとは思わないが、もし匿名性によってSBM利用者が拡大するなら、これもアリかもしれない。

Social Graphってどうよ? (小島一浩さん/産総研)

  • 講演中でも言及されたが、複数SNS間での自分 (me) 情報、friend情報の対応づけというのは、日本の状況ではピンとこない感じ。
  • Facebook Beacon の存在と問題点についてはまったく知らなかったが、確かに強力かつ危険性を秘めている印象。
    • Social Media Market 的な方向性は、自分がSNSに期待するものとは違うような気がする。
  • ソーシャルグラフを何に使うかについては、未開拓の部分が多そう。
  • 講演内容そのものは参考になったが、SBMとの関連がよく分からなかった…

私がチャレンジしたSBMデータマイニング (神林亮さん/筑波大コンピュータサイエンス専攻)

  • 専門知識がない状態から独力でSBMマッシュアップサービスを立ち上げた事例として興味を持った。
  • TF・IDF法や、それを現実のシステムに適用する手段については、もっと調べてみたい。
  • 発表の内容とはあまり関係ないが、自作サービスのネーミングやロゴ製作のノウハウについて興味あり。

パネルディスカッション

  • 社内SBMの話 (吉川日出行氏): みずほ情報総研内での成功事例は、コンサル業務の中で情報収集の重要性が高いこと、1日当たりの全エントリ数が10程度と十分少ないことなどの特殊な条件で成り立っている印象を受けた。
    • 情報収集が日常業務に密着していないような職場では、社内SBMは意味がないだろうか?
    • エントリ数が多くなると、部門単位などで分割する必要が発生する?
  • 社内ブログ/SBMで出して良い話/ダメな話の区別: これらの情報共有ツールがない世界では、本来は部門外に出して良いはずの情報が部門内に閉じていたわけで、今後は情報の開示可能範囲をよくよく考える必要性が増加するのではないかと思う。
  • Buzzurlの話 (宇佐美氏): 企業向けSBMに手をつけていない理由として、企業向けではカスタマイズに開発リソースを取られるためという話があった。やはりWebの世界では個人向けサービスが先導するのか?