『弱者99%社会』

2章「現役世代をどう支えるか」を中心にざっと拾い読み。

弱者99%社会 (幻冬舎新書)

弱者99%社会 (幻冬舎新書)

以下は自分なりの解釈を含んでいるので、必ずしも本文の内容とは一致していない可能性があります。

日本的雇用と社会

伝統的に (高度成長期〜1980年代くらい?) 日本における正社員は以下のような性質を持つ。

  • 安定した雇用 (主に解雇要件の厳しさに起因)
  • 年功型の賃金上昇
  • 充実した社会保障、社会的信用
  • 異動、転勤、長時間残業/休日出勤など、過酷な勤務内容

一方、アルバイト、パートなどの非正規雇用は、これとは対称的に、以下のような状況にある。

  • 不安定な雇用
  • ほとんど上昇しない賃金
  • 薄い社会保障、低い社会的信用

20年前くらいまでは、夫が正社員として安定した収入を得て、妻がパートなどの形で補助収入を得るという形で、それなりにうまく回っていた。しかし、近年の正規雇用の縮小とともに、この構図が成り立たなくなってきた。狭き門となった正規雇用を獲得できないと、家庭を築くのが困難というのが今の状況。また、正社員としては、「少数精鋭」化のために要求される能力が高度化し、疲弊しやすい状況になっている。

この状況に対して濱口桂一郎氏が提唱しているのが、「ジョブ型正社員」という雇用形態。

  • 雇用契約の中で、職務、労働時間、就業場所が規定される (→契約で規定された仕事以上のことはする必要がない)
  • 雇用期間の限定はない (会社から見ると、仕事がなくなった時点で解雇可能。逆に雇用期間の上限もない)

ジョブ型正社員は (日本型) 正社員と非正規社員の中間的な存在であり、正社員として働き続けるのが無理な人、および非正規社員からステップアップしたい人の両方にとっての選択肢となる。

(以下感想)

ジョブ型正社員の可能性について、思いついたことを列挙してみます。

  • ジョブ型正社員のような制度は、確かに多くの人にとっては適した選択肢になりうると思う半面、現状の延長として考えると、結局ブラック職場のような問題が発生するのではないかという気もする。
  • 現状でも、正社員の立場でもそれほど疲弊する状況でない人も多い (であろう) ことからの類推で、結局ジョブ型正社員が成立するかどうかは、個別の業界や会社の状況に依存するのではないかと思う。
  • 企業にとってジョブ型正社員の導入にどのような合理性があるのかが1つのポイントと思う。企業が戦力とみなすような高度な専門性を持っていて、かつ正社員として働くことができない/希望しない人については、ジョブ型正社員として雇用する必然性がある。